離職率が高い企業が取るべき対策

いきなりですが質問です。

「離職率が高い企業が取るべき対策とは何でしょうか?」

「なぜ我が社は社員が定着しないのだろう?」と悩まれている中小企業の経営者の数は少なくありません。しかし良い社員が長年勤務し、成長し続けている中小企業もあります。

では、いったいどこが違うのでしょうか?

問題点をきちんと把握し、それを改善するために適切な対策を行っているでしょうか?

灯台下暗しで、意外と社内のことが見えていないがために離職する社員が続出し、せっかく新しい社員を雇用しても、長く定着せずまた離職していく…という負のスパイラルに陥ってしまっては、会社が潰れる危機に直面しかねません。

この負のスパイラルを断つために、まずは問題点を把握しましょう。突然社員に辞められたときは、自分が否定されたように感じ「何を怠っていたのか?」と不思議に思うかもしれません。仕事が良くできて会社に貢献していた社員が突然辞めた時こそ 「自分は社員に何を提供できていなかったのか?」と自分自身へ問いただすべきです。

会社にとって利益になる「仕事が出来る社員」が定着しないことは、「離職率が高い」という実態の中でもより深刻な問題です。

優秀な社員が離職する原因・理由とその対策

始めに、仕事の良くできる社員が辞める際の主な原因や理由と、それらを防止するための対策を説明します。

課題が不足している

経営者は、仕事のできる人材には新たな課題を与え続けなければなりません。

なお、その際、必ずしも昇進と関連付ける必要はありません。昇進にそれほど興味が無い人も少なからずいるのです。特に社員数の少ない中小企業では、大企業と異なり、役職名や職位がそれほど大きな意味を持たないこともあります。

仕事ができる社員の中には、単に自分の視野を広げる仕事に挑戦したいと思っている人も大勢います。ハシゴを一段一段上がるかのように、限りなく上に向かって登っていけるような課題を常に用意するようにしましょう。ただし、「あなたが考える社員が要望すること」を一方的に与えるのではなく、「社員にとって本当に意味があること」を提供することに注意してください。

営業担当者のモチベーションアップを行い、成果を高めるための取組みについては”トップ営業マンの育成方法“もご覧ください。

関わりが不十分である

社員が良い仕事をして成果を出したとき、その社員に対して何をしているでしょうか?

多くの上司はその社員が行った仕事の功績を社内メールで称えたり、その社員を食事へ連れて行ったりします。その行動自体は問題ではないのですが、これらの行動を取り終えたその時点で、上司としての自分の仕事も終えたと勘違いしてしまうことが問題です。

社員にとっては、社内メールで褒められても、食事へ連れて行ってもらっても、「それが何?」といった具合にそれほど大きな意味を持ちません。功績を他の社員に知ってもらうことはもちろん大切ですが、上記のような行動自体は「社員に対して本当の意味で関わる行動」とは言えません。

多くの上司は、仕事ができる社員のことをオート・パイロット、つまり、”仕事の割当てを与えて、あとは走らせるだけ”のように思っています。ある程度は当たっているかもしれませんが、仕事ができる社員は「関わって欲しくない」「批判されたくない」などとは思っていないものです。

向上心のある人の多くは、「批判されることよりも無視される(関わられない)ほうが最悪だ」と言います。多くの会社でも同じです。本来、社員を認める行動とは、社員と深く関わることでやっと完結します。

「深く関わる」とは、重要なフィードバックを与えることや、社員の仕事やキャリアに本当に投資することを意味します。これは社員に対する上司の仕事の質の問題です。社員と関わり合う行動を適切に行う上司の元では、社員の仕事の質も、またさらに向上することでしょう。

社内環境が悪い

生産性の高い社員を定着させたいのであれば、生産性の低い社員を離職させるべきです。生産性の高い社員は生産性の低い社員を嫌います。

ここで言う生産性の低い社員とは、仕事に対してやる気が無く、仕事をしている振りをして、ただ給料をもらうために会社に来て自分の席を温めているだけのような人のことです。

あなたの会社では生産性の高い社員へ生産性の低い社員の仕事が委託され、生産性の低い社員は定時に帰宅するのに、生産性の高い社員は残業をする結果になっていないでしょうか?

次のポイントについて一度考えてみてください。

①スピード重視ではなく、仕事の精度を重視しているか?
仕事が速い=仕事ができるとは限りません。社員が行った仕事の内容に注意を払いましょう。

②家族や友人の一員か?それともチームの一員か?
誰にでも居心地が良いと感じる相手と、居心地が悪いと感じる相手はいるものです。それは経営者にとっても同じです。

たとえ仕事がそれほどできなくとも、口の上手い社員や自分に逆らわないような社員を優遇してしまってはいないでしょうか?仕事と私事は別だということをしっかり肝に銘じておかないと、本当に仕事ができる社員が去ってしまう結果を招きかねません。

③データと直感、どちらを重要しているか?
自分の直感よりも、データを重視して冷静に判断してください。

④会社の社風は、仕事のできる社員に合う社風か?
社風は社内の雰囲気のことです。これは社員が働きやすいかどうかに関わるとても重要な要素です。

「そうは言っても、人によって好む社風も様々では?」
と思うかもしれませんが、仕事のできる社員の好む社風と、仕事のできない社員の好む社風は、彼らが述べる内容から判断できますので、仕事のできる社員の好む社風にしていくようにすべきです。

離職率を下げるための取組み

ここでは、離職率を下げるために取り組むべきこと、意識すべきことについて解説します。

管理の見直し

離職率が高いということは、きちんと社内の管理が行き届いていないということです。管理職の方は直ちに管理の見直しを図りましょう。社員から定期的にフィードバックを収集する習慣を付けることで、どのように社内が改善しているかを社員自身も意識することができます。

管理職が効果的なスキルや戦術を見出し、進行状況をチェックする方法を見つけることも重要です。

管理の見直しを図るには、半年ごとに社員へアンケートをすることをお勧めします。本音を書いてもらうためにも、自分の氏名を伏せることを希望する社員へは名前を伏せる選択を与えます。

アンケートの質問例は以下を参考にしてください。

  • 良いと感じている社風
  • 改善したらよいと思う社風
  • 問題視している社風
  • あなたの会社はどんな会社ですか?
  • あなたが一緒に仕事をしたいのはどのような社員ですか?
  • 上司(名指し)に求める改善すべきことは何ですか?

さらに、離職する社員へ「なぜ離職するのか?」「どんな改善が行われていたら辞めずにいたか?」を記入してもらうアンケートをとることもお勧めします。離職した社員たちの回答内容を比較することで、どの傾向を直ちに解決する必要があるか、改善策の検討に繋げられます。

社員に対するリスペクト

「たとえ、何らかの理由で離職を考えていても、直属の上司からリスペクトされていると感じている場合は、離職を留まる」

離職を検討している400人を対象に行った調査で32%が上記のように回答しています。
(参考:EMPLOYEE RETENTION REPORT|TINYpulse)

自分をリスペクトしない相手を信用することはまずありません。リスペクトは日本語に直訳すると「尊重する」「敬意を表す」などの意味になりますが、これを社内で言うなら、「その社員を仕事のチームの一員として認める」ということになります。

例えば、上司だからといって他の社員を自分より下のレベルとして扱う態度をとる、仕事が上手くいかないときにその社員へのサポートをしない、仕事が上手くいったときでも認めないなど、社員は思いやりが無い上司から自分がリスペクトされているとは感じません。

これは上司に限らず社員同士でも同じことが言えます。自分が上司や同僚からリスペクトされていると感じている社員は、自分自身も会社にとって重要なのだと感じることができ、自分が関わる仕事に対してもしっかりと責任を感じて取り組みます。このため、リスペクトされていると感じている社員の仕事の生産性は向上します。

誠実でオープンな態度

生産性の高い仕事ができるトップレベルの社員に限らず、離職を阻止するためには何が重要でしょうか?

それは「誠実でオープンな態度」です。以下は誠実でオープンな態度を取るべき状況の具体例です。

①変化を伝えるとき
一般的に人は変化を恐れます。社員が会社の変化に気づき、その変更の意味について理解できていない場合は離職という考えが浮かびます。

たとえ経営者にとっては改善を目的としたものであっても、変化自体を心地よく感じない社員もいます。

社内変更が行われる場合、リーダーは新しいイニシアチブと変更内容をできるだけ早く明確に伝える必要があります。特に、社員は今までと変わりなく仕事を続けていくことができるのかどうかを知りたがっています。

社員へ社内変更について周知する場合、個々のレベルでどのように影響するかについても具体的に説明してください。社内変更に関係する社員と面談する時間を取り、彼らの日々の業務について何が今までと異なるのかを説明します。

話すときは誠実にオープンに話してください。オープンに話してもらえることによって、予期できない最悪の事態などの不安感を解消することができ社員は安心します。また、この社内変更が社員と会社組織にとって、長期的にはどのように良い影響を与えるのかについても示すようにしてください。

②信頼を回復させるとき
社員が会社に留まることを決めたとしても、複数の同僚が退社するのを見て、会社の未来への信念が揺さぶられる可能性があります。リーダーとして社員を安心させるのは、上司、管理職や経営者の仕事です。「会社には何が必要か?」「どうするべきか?」などを具体的に説明していくと、社員が将来を想像しやすくなり、その結果、納得し、会社を信じることができるようなります。

「社員が離職してしまう」という問題に対し明確な解決策を提示し、しっかりとした計画があることを社員へ伝えます。誠実な説明と安心を受けることができれば、忠実な社員は会社に定着します。

実行中の解決策とその解決策のタイムラインについても伝えてください。問題点については決して隠したり、嘘をついたりせず、オープンに伝えましょう。たとえネガティブな内容であっても、社員は本当のことを知らせてもらう方が安心します。反対に、隠されたり嘘をつかれていたという事実を知ったときは、離職する意向が強くなります。

離職率を下げるための採用面接の秘訣

ここでは、採用面接の際に定着率の高い社員を雇うための秘訣を紹介します。

魅力的な勤め先として他社よりも優れた給料や待遇はもちろん大事な要素ではありますが、仕事のできる人が利益と感じるのはそれだけに限りません。企業の目標や価値観に合った人材を雇用することは、離職率を下げることにも繋がります。

面接時に避けるべき質問

雇用面接のときにする質問は、Google検索で調べることができるような、一般的な内容の質問でしょうか?

もし、そうであれば、面接の質問内容を検討し直し、戦略を練り直す必要があります。一風変わった質問は、その被面接者の内面を浮き彫りにすることができます。

なお、仕事のスキルは入社後にいくらでも教えることが可能だということを認識しておきましょう。そのため、被面接者と会社の目標が合致するかどうかに焦点をあてます。

社員を面接に参加させる

部署によって行う業務の内容は異なります。よって、面接の最終段階では、入社後に一緒に仕事をしていく同僚に面接者として参加してもらいます。長期的に社風に合うことができるのか?、被面接者は部署が望む特性を持っているか?など、実際に一緒に仕事をしていく社員からの視点で面接します。

面接中にとるコミュニケーション

経営者の価値観を尊重する社員が欲しいのであれば、最初からその価値観を伝える必要があります。ホームページやソーシャルメディア、または求人サイトなどを使って会社の紹介を行いましょう。入社希望者は、メディアを通じて会社のことを知り、自分とのつながりを感じて申し込んできますので、潜在的入社希望者を引き付けることができます。

会社の社風が自分に合うと感じている入社希望者が雇用される可能性は高いので、入社後も定着率が高いです。

社員の幸福を促進するものを用意する

社員の幸福を促進するものがあるでしょうか?例えば、仕事と私生活のバランスを取ることができる会社は、社員の幸福を促進させます。

社員が幸せだと良い雇用につながります。例えば、良い人材を紹介されたり、会社の噂を口コミで聞いて「社風が自分に合う」と感じて入社を希望してくる人が現れることもあります。

なお、社員の幸福を促進するための福利厚生と退職金については、”一生働きたい会社を作る!退職金で充実の福利厚生“をご覧ください。

おわりに

離職率が高い会社が取るべき対策について解説しました。重要なポイントは、会社が成長するにつれて社風を維持、または改善していくという点です。採用した時点で、社風についても改めて明確に説明し、後に問題に繋がる誤解をさせないように注意してください。

離職率の改善は、財務と労務の両面から行わなければなりません。財務も強化しつつ、従業員が一生働ける環境の会社づくりをしたい方がいらっしゃいましたら、当社にお声がけください。会計や税務だけでなく、財務、保険、銀行取引やITにも強い公認会計士が、あなたの会社の発展のため、全力で支援させていただきます。

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