一生働きたい会社を作る!退職金で充実の福利厚生

より良い会社を作るためにこれまで頑張って働き、経営者である自分に付いてきてくれた従業員。「もうすぐ定年になる彼らのために、退職金をしっかりと支払ってあげたい」、そんな想いを持つ一方で、
「退職金っていくらくらい払えばいいのだろう?」
「退職金を払っても会社の資金繰りは大丈夫なのだろうか?」
という疑問を持つ経営者の方が多いのではないでしょうか。

せっかく、退職金を支払うのであれば、長年勤務してくれた従業員にきちんと報いるともに、現役で働いている従業員にとっては、その会社で一生働きたいと思ってもらえるようなモチベーションに繋げるべきです。

では、経営者の感謝の気持ちが従業員にしっかり伝わり、かつ、会社の財務も問題ないような退職金を支給するためには、どうしたら良いでしょうか?

まずは、退職金制度の基本事項について見ていきましょう。

福利厚生制度と退職金制度の関係

まずは、退職金制度がどのようなものなのか、福利厚生制度との関係について説明します。

福利厚生とはどんな制度か?

「福利厚生が充実した会社」というのはこれから社会人になる若者でも魅力を感じるポイントの一つです。では、そもそも福利厚生とはどんなものなのでしょうか?

福利厚生は大きく2種類に分けられます。1つは法定福利厚生で、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険や労災保険が該当します。これらは従業員を雇っている会社であれば必ず加入しなければなりません。保険料は従業員だけでなく会社もほぼ同額を負担します。

もう1つは法定外福利厚生で、住宅手当、家賃補助、社員食堂、育児・介護休業、リフレッシュ休暇や慶弔金等が該当します。これらの制度は、会社の任意で導入するかしないかを決定できます。

このように、「従業員に支給される給料以外の報酬」が福利厚生です。様々な種類の福利厚生がありますが、いずれにも共通する目的は「従業員が幸せな生活を送るためのもの」であるということです。

退職金と福利厚生の関係は?

退職金は法定外福利厚生の1つに位置付けられます。退職金は定年退職に限らず、自己都合で会社を中途退職した時にも支給され、賃金の後払いとしての性格が強いです。定年退職者にとっては、退職後も安心して楽しい暮らしをするための原資であり、中途退職者にとっては次の仕事に就くまで間の生活費に充てられます。つまり、退職金は、退職後の生活まで面倒を見るという、従業員にとってはこれ以上にない、手厚い福利厚生制度なのです。

退職金の相場はどれくらい?

退職金の相場は企業規模や勤続年数等によって変わってきます。厚生労働省の平成30年の就労条件総合調査によると、以下のような実態となっています。

まず、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者について学歴別に見てみます。

退職事由 大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(現業職)
定年 1,983万円 1,618 1,159
会社都合 2,156 1,969 1,118
自己都合 1,519 1,079 686
早期優遇 2,326 2,094 1,459

どの学歴においても「早期優遇」が最も高く、「自己都合」が最も低くなっています。

次に、定年退職者の勤続年数別に見てみます。

勤続年数 大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(現業職)
20~24年 1,267万円 525 421
25~29年 1,395 745 610
30~34年 1,794 928 814
35年以上 2,173 1,954 1,629

勤続年数が長いほど、退職金の金額が大きくなっていくことがわかります。

参考:平成30年就労条件総合調査 – 退職給付(一時金・年金)の支給実態|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html

退職金は自由に設計できる福利厚生

上述のように退職金は法定外福利厚生です。つまり、退職金制度を導入するかどうか、導入する場合に、誰に、いくらを、どのように支払うかは完全に企業の任意で設計できます。

例えば、退職金の支給額を決める際に、勤続年数を重視することもできますし、在職中の功績を重視することもできます。定年退職と自己都合退職に大きく差をつけることもできますし、給与に連動させずに上限を設けるというようなことも可能です。つまり、設計しだいで従業員のモチベーションを上げられるとともに、従業員にこうあって欲しいという姿も反映することができます。

ただし、一つだけ注意しておかなければならないのが、退職金を規程として定めたら、そのとおりに支給する義務が生じることです。数年間退職金制度を運用してみて、効果があまりないことがわかったから廃止しようと思っても、簡単には廃止できません。支給額を減額することも、従業員にとっては不利な変更になるので、同意を取得するなどの手続が必要となります。

導入したら簡単には止められない、というのは経営者にとってはデメリットに感じるかもしれません。しかし、簡単には止められない制度であるからこそ、経営者の福利厚生に対する本気度が従業員に伝わります。また、制度設計を工夫すれば、長期間にわたり財務負担の少ない方法にすることも可能です。

退職金制度で変わる会社の見え方

終身雇用が時代に合わなくなってきているとも言われていますが、そうすると退職金制度も時代遅れのものになってしまっているのでしょうか?

いいえ、決してそのようなことはありません。そもそも、退職金制度は定年退職者だけのものではありません。しっかりと働いて会社に貢献してくれた従業員の労に報いるためのものですので、終身雇用とは関係ありません。

では、退職金制度がある会社は、どのように見られるでしょうか?

退職金が制度として運営できている会社は、通常の給料や賞与を支払った上に、さらに退職金のための積立ができています。つまり、毎期安定して十分な利益を稼げているということを意味します。このため、近隣地域の中で、福利厚生の手厚い優良企業であるというように映ります。優良企業として他の企業からも一目置かれるようになれば、自社のイメージアップにつながり、業績も拡大するかもしれません。就職のときにも、他の条件がほとんど一緒であれば、退職金制度がある会社とない会社では、前者の会社の方が選ばれやすくなります。

退職金制度の種類

退職金制度には主に以下の4つの種類があります。種類によって退職金の支給の時期、支給の仕方、支給者や積立方法に違いがありますのでそれぞれ解説していきます。

退職一時金

退職一時金は、退職金規程で定められた金額を、退職時に会社が一括して支払うものです。退職一時金の原資は会社の内部留保です。そのため、退職金の原資として積み立てしていたとしても、一時的に資金が必要になったときには、その積立額を使用することができます。しかし、もし仮に内部留保が退職一時金の額に足りなかったとしても、退職金の支払い義務を免れることはできません。

積立額については、別口座で保管・運用していたとしても経費にはなりません。経費になるのは退職金として実際に支払った年度です。節税効果を利用した積立を行う場合は後述する養老保険を活用します。

中小企業退職金共済

中小企業退職金共済(通称、中退共)は、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する制度です。会社は中退共と退職金共済契約を結び、毎月掛金を支払います。従業員が退職すると、その従業員に中退共から退職金が直接支払われます。

中小企業退職金共済は、掛金が経費になるので、節税効果を利用した積立ができるというメリットがあります。一方で、中退共から退職金が直接支払われるため、会社の福利厚生制度であることが感じられにくいというデメリットがあります。また、懲戒解雇などの場合を除き、従業員であれば誰にでも掛金に応じた額が支給されます。このため、定年退職と自己都合退職で給付に差をつけるとはできません。

確定給付企業年金

確定給付企業年金は、会社が退職金支給に必要な金額を、毎月外部機関に拠出する制度です。従業員が退職すると、退職金規程で定められた金額が外部機関から従業員に直接支給されます。従業員は受け取れる金額が確定しているため、その運用リスクは会社が負担します。つまり、退職一時金と同様に、積立不足の問題が起きる可能性があります。

会社は信託会社や生命保険会社と契約を結び、退職金の積立・運用を行います。しかし、おおむね50人以上の加入者がいないと、引受先が見つからないことが多いです。

確定拠出年金

確定拠出年金では、会社が決められた額の掛金を資産管理機関に拠出します。従業員が自ら選んだ方法で運用され、将来の退職金給付額が決まります。そのため会社の負担は毎月の拠出掛金のみであり、積立不足の問題は発生しません。しかし、従業員が運用に関する知識を持っていなければ十分な額の退職金とはなりません。従業員に運用リスクがあるため、従業員が期待している退職金とはギャップがある可能性があります。

退職金の支払準備の方法

中小企業でも活用ができる退職金の準備の方法について解説します。

養老保険

養老保険は、主に退職一時金の積立として活用されます。従業員が全員平等な条件で加入するようになっていれば、保険料の1/2を経費としながら退職金の積み立てができます。条件が平等であれば良いので、例えば、入社3年以上の従業員だけを対象に加入させることも可能です。

養老保険の場合には、生存退職金だけではなく死亡退職金/弔慰金の準備も同時にできるため、福利厚生制度としても手厚くなります。また、社員が懲戒解雇等の場合には退職金の減額も可能です。

保険料として積立を行ってはいますが、契約者貸付という制度を活用すれば、緊急時の事業資金として利用もできます。

中小企業退職金共済の活用

上で説明したように、中退共を利用すると節税効果を利用して積立ができるものの、退職理由により給付額に差を付けられないという欠点があります。この欠点を補うために、自己都合退職の場合の退職金は、中退共で準備を行い、定年退職と自己都合退職の差額については、養老保険を活用して積立を行うこともできます。

おわりに

福利厚生における退職金制度の位置づけと退職金の種類、支払準備の方法について解説しました。

退職金制度の設計や見直しは財務と労務の両面から行わなければなりません。従業員への還元を手厚くしつつ、財務負担を抑えた退職金制度を通じ、従業員が一生働ける環境の会社づくりをしたい方がいらっしゃいましたら、当社にお声がけください。会計や税務だけでなく、財務、保険、銀行取引やITにも強い公認会計士が、あなたの会社の発展のため、全力で支援させていただきます。

財務、退職金制度、経営等について、お役に立てる情報があるかもしれませんので、よろしければコラムの一覧もご覧ください。